R.I.P

小学生の時の歓迎遠足の帰り道、外国人の女性と男性がベンチに座っていた。二人の前を通りかかった時、男性に「ハロー」と声を掛けられた。自分のいた列の人たちみんなが「はろー」と返していた。男性はにこやかに私たちに向かって手を振っていた。

それから自分たちがしばらく歩いていた時、周りの仲間達がじっと左側を見続けているのに気付いて、私も左を向いた。歩いていた歩道から道路を隔てた左側にある小さい坂の上に、外国人の男性がうつ伏せになって血を流した状態で横たわっていた。服装、髪型、体型、全て先程挨拶を交わした男性と同じだった。その近くにあの外国人の女性が立ち尽くしていた。養護の先生がそれに気付いて急いで向かったが、意識がないようだった。歩きながらずっとその様子を眺めていたが、やがて建物に隠れて男性は見えなくなってしまった。

男性に気付いていたのは児童の大半であっただろうが、その後誰一人として男性のことを話題に出すことはなかった。

そして、外国人の男性と再び出会うこともなかった。

 

終い。