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小説

人生の価値観とか、人がすぐに迷い込む発想とかどーでもよさそうな生き方をしているけど、案外僕ってそんなもんじゃないんだぜ。

メッゾさんは至ってそれをどうでもよさそうにつぶやいた。だけど、それが本当に彼にとって戯言なのかはイマイチ俺にはわからなかった。なので彼の動向を見守ることにして、とりあえず表面上では俺は黙った。

「だからクルックスを...殺した時からずっと泣いてたんだ、僕。...大好きだったからね。でももう立ち直ったよ」

「......」

「ねえ、びっくりしてるの?...僕そこまで虚弱じゃないんだよ。......ねえ、それとも僕の話聞き飽きた?」

冗談めいた表情で訊いているはずだろうが、心に適応しない感情が彼の中で蠢いていたらしく、それは歪んだ作り笑いになりかけていた。その表情は俺が一番大好きなものだったが、きっと彼は今の自分を一生認めたくないと思っているのだろう。この人の細められた朱色の目は、親友を手にかけて、アヴィナを衝動的に殺して、次は自分だろうと言いたげだ。俺は彼の口の端に指を引っ掛けたくなったが、そんなことをしたらこの人は俺の思っている方向とは別の向きに壊れてしまうのでもう言いたいことは喋ることにした。

 

「泣けばいいのに」

「は、」

メッゾさんはらしくない乾いた笑い声を出した。

僕はもう大丈夫だよ。どうしたの拓くん。そう彼は震える声で続けたが、俺はお構い無しにもう一度言った。

「泣けばいいのに」

「ね、ねえ、拓くん。一緒にこの曲聞こう。僕が昔から好きな......どうしたの。ねえ」

 

異常なのが俺も、彼もだということはわかっていた。

 

気が付けば彼の首を絞めていた。掠れていく高めの声がほんとうに嫌だった。拓くんやめて。ねえやめて。苦しいよ。君だけは殺したくない、やめて、

 

ああ、やめるのはあんただ、疎ましい!

 

吐き捨てるように叫ぶと、彼はようやく絶望めいた瞳をはっきりと見せた。

 

 

「だって俺とあなたは同類なんだ」

 

大切なものを失ったなら、こうやって2人で堕ちて埋め合いっこするしかないんだよ。

 

 

 

 

 

 

しぬほどかきかけ